■ 末石月報 大学もconsultantの世話になる時代がやってきた
拉致被害者のことが喧しい。また、竹中大臣の経済・金融構想+道路公団民営化vs. 与党の抵抗勢力(前者は日本崩壊、後者は自民党崩壊の前触れか)などと比べると、国 立大学の独立行政法人化はそよ風のようなものだが、これをそよ風と受け止めている かぎり、大学の前途も極めて暗い。東大、京大、阪大あるいは近大(生命科学には実 績あり)などに伍して、他大学がいっせいにCOE(center
of excellence=卓越した 分野の研究拠点)を掲げ出したのは滑稽である。
先月、Corporate Directions,
Inc.のCDI Newsletter
Vol.66が届き、久しぶり に最初から最後まで読んだ。見出しに「大学」のガバナンスがあったからである。そ の内容をここには再録しないが、骨子は
1)
国民や社会へのaccountabilityの重視と競争原理の導入 2) 経営責任の明確化による機動的・戦略的な大学運営の実現 3)
国際競争に対応しうる教員の多様性・流動性の拡大と適任者の幅広い登用
の3項目で、「長」のつく人のleadershipと学長のrecall制までが入っている。これ らの項目自体は至極尤もなのだが、CDIのこの問題への関わり方が極めて面白いの
だ。気になる人は、info@cdi-japan.co.jpへメールしてバックナンバーを注文するこ とをお薦めする。また会社概要は、URL:http://www.cdi-japan.co.jpを見ればよい。 ここでは、吉越
亘現会長のことに一言ふれておく。
彼は僕の京大時代の直弟子(ただし弟子のレベルをはるかに超えている)で、73年 に修士修了後独自に東京ガスを開拓、MITのbusiness
schoolへ派遣、帰国後Boston Consultantを経て86年にCDIを設立した。京大時代は山岳部のリーダーで、雪山で 遭難したときの沈着な危機管理のことも、彼の著書『吉越
亘、経営戦略を語る』 (TBSブリタニカ)に述べられている。
Vol.66の著者は同社顧問の各務(かがみ)茂夫で、以前は同社の専任だったようだ が、今の本職が、東大大学院薬学系研究科助教授だということが出色なのである。そ こで僕は、吉越宛に読後感を送ったので、その内容を以下に転載することにした。
吉越
亘 様 (前略)Newsletter
vol.66の各務茂夫氏の論説を精読しました。よい人材を抱えてい て羨ましい。東大の薬学系研究科が「世も末か」と嘆いているかも、とあるが、東大 こそがこういう人事をやるようになったのです。他に、建築の安藤忠雄や社会学の上 野千鶴子など。
大学のgovernanceのところで思い出したことがひとつ。貴君らが京大で長期ストを やっていたとき、僕は学部長の密命を受け、他の先輩3教授とともに2年間、毎週火 ・金曜pm6-pm12、連綿と討議をしていて、「工学部改革の一提案」前後編を作った。 その時の骨子のひとつが、今度の各務氏の記述にあることとよく似ている。ただしそ のleaderとした「管理教授」はあまりよくない命名だった。しかしこの提案は全く受 け入れられず、改革するならしてみろ、といわんばかりの顔を多くの教授がしていて、 今の与党の反対勢力と同じ。上記4人のうち次々と2人がただ1回の投票で学部長に され、彼らは難渋を極めた。次はお前の番だぞと僕は言われていた。
翻って現在、国立大学は、法人化とCOE(center
of
excellence)を混同していて、 governanceなどを知ろうともしない平々凡々が学長になる。悪口をたたけば、現在の 大部分の学長もある狭い分野の権威というだけで、退職後は当て職的に社会的な要職 におさまっていく。これは、日本のex-officio制の大欠点で、大学評議会や部局長会 議がまさにこれ。経営協議会でも、似たメンバーが集まって「なあなあ」とやってい る小田原評定に過ぎない。
吉本興業が大学教員のmanageもするぞと宣言したが、僕は精華大に、僕を10億円で 滋賀県に売れと提案したのだが、学長は尻込みした。精華では、学長代行兼教学担当 常務理事として資料調査・提案文書・口頭説明などに日夜奮闘していたのだが、弟子 筋からまでが、(僕が)人文学にすっこんでいるのはけしからん、という風評が出る始 末だった。 CDI創設の時、「大学のコンサルをやりなさい」と貴君に言ったのを覚えています か。遂にこの時期到来ということですね。以上をも少しparaphraseして末石環境塾の HPに載せたいので御了解を。(後略)
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