末石月報 安倍が通れば道理が引っこむ

 これは大藤理子の政治時評(2月11号)にあった表現である。安倍晋三の発言には立腹することが多く、本誌あたりで、事件別ではなく個人別言動リストを作る必要があるのではないか、とさえ思う。
 「戦時性暴力裁判」(主として慰安婦問題で天皇の罪を問うた)ETV特集改竄の件で、自民に押し切られて『朝日』を攻撃する側に廻ったNHKの弱腰もさることながら、日本の政治がこの種の嘘で固まっているのでは、と考えると、日本人が地球にいることすら問題視せねばなるまい。
 2月25日号の投書で橋本新一氏が「ファシズムの亡霊をみた」と言い、『朝日』に対する安倍の傲慢さを例に挙げて、頬が弛んだ祖父に似てきた、と結んだが、私が忘れられない安倍の暴言で、その後誰もふれないのがあるので、やや旧聞ではあるが、読者の注意を喚起したい。
 去年の4月、高遠菜穂子ら三人を拘束したイラク武装集団は、三人に目隠しして喉に刃物を突きつけ、自衛隊の即時撤退を要求した。日本政府はすぐに要求を拒否、ヨルダンに対策委員会をおいたが多分何もせず、「自己責任」論を言い立てて三人に対する国民のバッシングを煽った。
 三人が解放されたのは、イラクの聖職者やアルジャジーラ、さらに日本のNGOの水面下の働きだったという。この時安倍は何といったか。私ははっきり聴いた。「解放は、自衛隊を絶対撤退させない、と私が宣言したからだ」。―――「盗っ人猛々しい」とはこういうことを言うのだろう。


 

                        [末石月報のトップへ]