末石月報 いま、「永遠の不服従」とは何か

 「永遠の不服従」、誰に対してか? 特に現在日本の政治・行政に対してである。4年ほど前に「流石」の筆名で書いた「隻眼先生の環境マンダラ」にもこの語句を使った。そして昨夜、表題のタイトルでの辺見 庸の語りを再読した(05年7〜8月『週刊金曜日』)。不服従の方法は具体的には述べられていないが、キーワードには、ロボトミー(前頭葉手術)、幻視、既視感(デジャヴ)が出てくる。特にロボトミーには、TVの愚劣番組と戦前の侵略の歴史を否定する右派の言動も含まれる。TVには、僕が挙げるなら個人は明石家さんま、島田紳助ら、番組では「ちちんぷいぷい」「ミヤネヤ」など、20歳若ければ誰といっしょに海へ行きたいか? どの男優と旅に行きたいか? などを街角で取材してランキングして放映する。
 ニュース番組では、NHKの御用放送、対して古館伊知朗の報道ステーションはしばしば自民党に苦情を突きつけられている。01年のNHK・ETV特集(戦時性暴力)は安倍晋三・中川昭一のイチャモンにへいこらして、この情報源であったVAWWネットワーク(西野瑠美子代表)が起こした裁判は高裁も却下してしまう。
 そこへもってきて自民党の仕組んだわざとらしい総裁選、国民を多彩な選挙で一挙に支持率アップときた。昨日麻生太郎が5人並んだところで叫んだ。多彩な顔ぶれを見よ、女性もいる、防衛オタクもいる、漫画オタクもいる、漫画は自分のことで週に20冊も読むと自慢しちょる。このアホ! 辺見も指摘していた。自民党の幹部が日韓併合は韓国の希望によるのだ、と。そういえば最近麻生が、姓氏改名は韓国側が希望したのだ、と。ではなんで伊藤博文が暗殺されたのか、などはウソにされてしまうのだろう。こういう国民を新教育基本法で育て上げたら、この国が世界の孤児になること必定だろう。ドイツの教育―戦争の覚え方―と較べてみよ。
 そこへもうひとつ、事故米。5年間に96回も査察をしても形だけ、農水事務次官も農水大臣も責任ないと言い張る。もしかしたら僕も京大病院入院中の不味い給食で食わされていたかも。

 これらが折り重なって猛烈な夢を見た。僕は若いときから夢を覚えるのが得意だった。朝起きたらすぐ『夢幻』と表紙に書いたノートに書き留めた。久しぶりにこれをやる。ある意味でわが全人生の総括のようなかんじもしたからである。
登場人物:1人を除いて名も知らぬ市井の人数人、妻。場面:梅田、十三、南方、淀川、淀川大橋、阪大吹田キャンパス(ただし大改装されて盆地の窪みに)、至る所に行き止まりがあって難渋。所持品:不明なるも財布は持たず、靴が破れて裸足、腕時計ばかり見ていた。(つづく)

 夢には「起承転結」はない。だからなぜそこから始まるのか、ちんぷんかんぷん。なぜか僕は梅田界隈にいた(しかし見慣れた梅田の特徴的な事物はない、阪急梅田駅の情景もない)。

 歩を進めるに従ってスラム街か貧民街らしきところへ彷徨い込む。そして必ず行き止まり。汚水が停滞している溝が悪臭を放つ。寝巻き1枚の男がぶらぶらしていて、いわくありげに僕を見る。こういう繰り返しが2,3度。遠くに淀川大橋が見えるがそこへ辿りつく道が分からない。やっとある男がそこを真っ直ぐに行けば橋へ出られる、という。(TVで)見覚えのある人で、あなたのことはよく知っている、と礼を言って歩を進めた。

 淀川大橋に出たが、橋と川が平行している。淀川は幅が700mはあるのに、ここでは幅30mぐらいで、その代わり路面スレスレまで水が波立って滔々と流れている。橋の上には建物はないはずなのに、商店がギッシリ並んでいる。橋を渡ればもうすぐ南方に近づくはずだ。その先に阪大がある。

 今日は僕の定年退職の日なので、せめて1回だけでもと今日は家から歩いて出てきたのだ。しかし靴が傷んできた。先がパクパクしている(昔の革靴は底皮と上部は糸で縫い合わせてあった。だから底に補強の皮を釘で打ち付けないと、あるとき突然糸が擦り切れて足先が開いてしまう)。おカネを持っていない(1級身障者で医者の払いはなく財布を持ち歩かないくせのため)ので新品の靴を買うこともできない。やむなくはだしになった。南方を過ぎてようやく阪大キャンパスに辿り着く。

 新設の研究所やラボが大増設されたことは知っていたが、これは何というヘンテコな場所! 巨大な擂鉢の縁に立って見下ろすかたちだ。すぐ近くに下に下りる階段があるがステップ(踏面)はわずか5cm角、手摺もなく急勾配。とてもこの杖一本では心許ない。遠回りして少し幅の広い階段へ。

 最初の建物では屋上からアプローチするようになっている。なんとか階段を駆け下りて玄関へ来ると受付けに旧知のI・Hが座っている。なんでこんなところに居るんや?と尋ねるがニコニコして手振り身振りするばかりで・・・・・。(I・Hは京大時代の研究室の雇員でのち四国電力に就職、四電コンサルの専務になった)

 早く環境工学科に行って妻に電話して車で迎えに来てもらわねば、と気が焦る。しかし何番目かの建物で屋上から降りるのがまたまた5cm角の急階段、ここで途方に暮れて目が覚めた。

 翌日この続きは見なかったが今朝それらしきものをみた。大旅行鞄と指定券ももって京都駅(らしい場所)から動きだした列車に飛び乗った(そんな身軽ではない)。デッキも満員、鞄を押し込み、からだを真っ直ぐにしようと、右手の杖に全力をかけているが、足がなかなか上がらない。それに靴が脱げそうで爪先にも力を入れて・・・・・。(目が覚めてやれやれ)

あとがき:@これだけの努力を素面でやれたら、永遠の不服従になるのかな? Aこの夢を見たのは2008年の秋で、その直後奇怪なことが起こった。「おくりびと」を見るために近くのホテルを予約して車で出かけたが忘れものをして一旦帰宅、その時突然履いていた靴先が夢の中と同じように両方同時にパクっと開いたのだ。結果的に靴を履きかえに帰ったようなことになった。

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