末石月報 「くらしなび―仮想水から見えてくること」

『毎日新聞』くらしナビ・2010年8月23日の「知らなかった水のはなし」1回目で、大問題の展開を期待して投稿を予定していたが、2回目が「雨水利用」、3回目が「緩速濾過技術」で終わってしまい、感想を投稿せよというタイミングを失した。この1回目の見出しは、「日本、年間640億トン「輸入」―本来必要な農業用水 食糧を通じ海外依存」を仮想水(virtual water)の考えを展開した沖大幹(東大生産技術研)のデータを使って説明し、吉村和就(Global Water Japan代表)の脅し文句を「異常気象、人口増加・・・・世界の需給予測 厳しく」として述べている。

沖教授はこの研究を2002年の世界水フォーラムで発表、このアイデアは1990年代初めのロンドン大学Anthony Allanの論文から得た、ということにしているが、僕は実は1979年に『エコノミスト』に同じ概念を提唱、1987年発行の共著書で琵琶湖・淀川流域での仮想水のやりとりを解析ずみだった。だから新聞記事程度の内容では拍子抜けであった。そこで以下の文章を投稿したが、反応はない。

仮想水640億トン輸入――誰がこんな状況をもたらしたか、農薬を世界に売りまくり、それを使った農産物を輸入しまくる、65歳以上に農業をさせる、こういう情けない状態を作り出した、農水役人、商社、それにJAも反省すべきでしょう。記事に登場した沖大幹教授と吉村和就氏は一昨年ほぼ同時にNHK総合TVのクローズアップ現代に登場しました。そして今お二人とも、「水の安全保障戦略機構」のメンバーに入っています(そして御用学者がずらずら)。この機構の前身は明らかに、自民党の特命委員会「水の安全保障研究会」(最高顧問森喜朗(上記機構の発起人)、会長中川昭一、2008年に吉村氏を中心に膨大なレポートを作成)です。表面的には世界の水飢饉に技術対処しようというふれこみですが、死亡直前の中川氏が、「みなさん外国で儲けてください」と言ったというレポも残っています。吉村氏が今回の記事で言っているように、「日本が世界の水問題で主導権を発揮すれば・・・・」の裏に何があるのか? 農水(国交)役人、商社、それにJA(水道業界)と似た仕掛けがあるのでは、ということをjournalismとして監視して下さることを期待します。



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