■座談会 その4

―言葉の使い方

羽深 「すごい」は使うなって。
一同
鯉住 ずさんな形容詞やっていうたはりますね。あと半疑問文、なんとか?って語尾を上げるのも。「〜ですよね」もやめろって。
西村 曖昧の「が」も。
羽深 それも言われた。
西村 正しい日本語をどう喋るかということを、ものすごく意識させられた先生でした。
櫻井 私は一番身につけることが多い手帳のなかに、末石先生からいただいたアドバイスを入れていて・・・(メモを取り出す)、これは私がフリーで編集の仕事をすることになった時のもので、インタビューするときの注意が書いてある。
1)取材先のデータ(既発表の文章など)を事前に頭に入れておくこと。自分で相手を決めるときは自分で集める。
2) 質問をするとき、例えば
3)「 どうお思いですか?」
4) など5W1Hで聞かないこと。
5) 「こうですか?」
6) と具体的に尋ねること。
 例:お立ち台に立っている野球の殊勲選手や、犯罪の被害者に「今のご感想はどうですか 」と聞くのは馬鹿げているし、失礼でもある。前者は嬉しく、後者は悲しいに決まっている。 これらを超える文言を引き出すのが取材の腕である。

2) 取材の話術に注意。深夜TVやワイドショウに出るおしゃべりタレントの変形日本語が猛烈な勢いで広がっている。これを無分別に使うと、私のように怒る人もいるはず。その悪例を挙げておくので、平常から話し方に自己訓練を課しておくこと。

1) 正当に形容詞を使うべきところに、「2) すごい」「3) すごーい」4) をむやみに挿入する。
5) 疑問文でもないのに、文章の中間の名6) 詞単語の語尾を疑問文式にちょっと上げる。「7) あなたは作曲?、はしないんですか?」8)  これは、1個の対象物しか指9) 示していないのに、「10) とか」11) をつけるのも同12) じ。「13) あなたは作曲とかはしないんですか?」14)  AとかBとかCとか、ならよいが。
「15) ○○なんだー」16) を使わない。これはロ)も含めて半疑問文という。
「17) ○○します」18) というべきところを、「19) ○○するじゃないですか」20) を連発する。
西村 宮野邸で卒業論文の書き方の指導を受けた時、一行の文章がたしか40字と書いておられたと思います。ものすごく頭に残っていて。できるだけ長い文章にならないように意識づけしてますねぇ。
平井 研究の内容はともかく文章の構成の方が、すごい、あっ、言うてしもた(笑)、文章の構成力を身につけることの方に力点を置かれていた。
一同
村上 (笑)これ、後でテープお越しするとき「すごい」を何回言ったかチェックしておいてください。
平井 一回ゼミでな、先生チェックしてはってん。一番多い人で18回。
羽深 うわぁ、こわ〜。
櫻井 何でもすごいで片づけるな、常に形容詞は豊富であれ、と授業のなかでよく言われてましたねぇ。
村上 一言で「〜など」で片づけるな、ということは、具体的にちゃんと頭のなかでイメージしろってことでしょ。ほんまにそういうことやと思いますね。
平井 「さまざまな」も使うなって言ってた。無責任なマス埋めである、と。
村上 うん、「いろいろ」もね。
高橋 でも、それいうたらなんも書けんようになる(笑)。
村上 使うたびに自問しますよね、ここ、入れていいのかなって。
高橋 的確な日本語を使えるように、ってことなんやろね。


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